その4 株価算定

株価を算定する理由

ストックオプションに限らず、新株発行や株主間での株式移動の際には、いくらで売買するのかという株価の問題が生じます。昔は額面株式という制度があって、企業価値に関わらず、株券1枚の定価が存在するという便利な時代もあったのですが、現在はもうありません。株式取引は何らかの方法により算定されたその時の価格(時価)によることとされています。

 

株価問題は上場審査上の大きな論点になりますが、税務上の論点もあるので、上場なんか関係ない、という場合でも注意が必要です。すなわち、本来の時価よりも著しく低い金額で売買した場合には低廉取得した側に、著しく高い金額で売買した場合には高額譲渡した側に、それぞれ税金がかかってくる可能性があります。

 

株価の算定方法はいろいろある

上場株式であれば市場価格があるので論点はないのですが、非上場株式は算定方法によっていくらにでもなってしまうので、いかに理路整然と理屈付けができるかが大切です。

 

ストックオプションのための株価算定は、その株式の発行価格(=行使価格)を決めるために行います。一般的によく利用されるのが、①簿価純資産方式(又は修正簿価純資産方式)、②DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)方式、③類似業種比較方式、及びこれらの折衷方式です。

 

①簿価純資産方式

簿価純資産方式は、帳簿上の純資産を基準にする方法なので、極めて簡単です。会社の成長初期段階においては、低い株価が算定されるので、ストックオプションの発行価格としては有利に算定できます。

しかし、IPOが近づいてくる段階では、帳簿外の付加価値も増え、事業計画によって将来の成長も描くことになるので、簿価純資産方式で算定するには無理が生じます。

 

②DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)方式

DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)方式は、将来の事業計画が存在する場合に利用できます。

もっとも、DCF法は、事業計画上の利益水準とその不確実性、割引率などによって、振れ幅が大きく出ます。したがって、ターゲットとなる株価水準を導きやすい半面、その客観性をしっかりと説明する必要があります。

算定の妥当性を説明するために、上場審査にも提出する中期事業計画との整合が取れた事業計画を利用する、外部の第三者による株価算定書を入手するといった配慮が必要でしょう。

 

③類似業種比準方式

類似業種比較方式は、上場している同業他社の株価を参考に、PER等を用いて自社の株価を類推する方法です。

ふさわしい同業他社がある場合には、客観性の高い株価が得られますが、上場会社の株価は非上場会社よりも付加価値が高い分、高めに算定されるので、ストックオプションの発行価格としては必ずしも有利にはならないこともあります。そのため、価格水準と客観性を両立させるために、複数の方法による折衷法もよく採用されます。