その3 監査難民

監査難民とは

2006年に、当時の中央青山監査法人が金融庁から業務停止処分を受け、多くの上場企業が監査の引受先探しに翻弄したことがありました。この時に「監査難民」という言葉が生まれました。それまで監査を行っていた監査法人から、突然監査証明を貰えなくなってしまったわけですから、市場は混乱しましたが、行政の介在も受けて何とか他の監査法人にへの交代によりことを収めました。

 

IPO監査難民

昨今は監査法人のリソースが不足しています。これは、相次ぐ会計不祥事による監査厳格化の波、公認会計士の人気低下による人手不足などが原因です。

そのため、IPO志向会社があまり早いタイミングで監査を依頼しても、断られてしまうケースが多く見られます。リソースが足りていないのでどうしても優先順位をつけざるを得ず、上場のスケジュールが近い会社から優先的に受嘱をせざるを得ないからです

 

なぜIPO監査は優先順位が低いのか

IPO監査の優先順位が低い理由は、既存の上場会社の監査を優先せざるを得ないからです。上場会社が監査を受けられないままでいると、上場廃止の事由にもなってしまいます。

監査法人は民間企業ですので、顧客を選ぶ権利はありますが、社会的使命もあるので、既存の上場会社をほっぽり出して、IPO監査にリソースを割きまーすというわけにはいきません。

IPO監査は儲からないので監査法人がやりたがらないのでは、という人もいますが、現在は初年度から値引きなしの契約が普通になっているので、IPOだからといって低収益なわけではありません。むしろ、リスクが高くて手間がかかるのに、満足に監査報酬を貰えていない上場会社の方が多いかもしれません。

 

だから依頼のタイミングが重要

監査報酬も安くないので、なるべく最短のスケジュールで、ショートレビューから2期間の監査までの合計3年間を目処に、監査法人を選定できるのがベストです。とはいえ、そう上手くスケジューリングできるとは限らず、監査に入る前から監査法人以外の公認会計士などにアドバイスをもらいながら、よく情報収集し、タイミングを図っていくことがベターです。

 

途中交代はネガティブ

主幹事証券会社同様、監査法人も上場準備の途中で交代するということは避けるべきです。交代があると、2年間の監査期間を始めからやり直す必要があります(規則上は1期目と2期目を異なる監査法人が監査しても構いませんが、実務上はありません。)。さらに、上場審査上もなぜ交代することになったのかということを厳しく追及されることになります。