その4 届出書への変身

有価証券届出書

このようにⅠの部は、幾度ものバージョンアップを重ねて最終版が完成していきますので、そのバージョン管理がとても大切になります。Ⅰの部の最終版は上場承認日に形式上正式提出となりますが、同じ日に提出する有価証券届出書という法定提出書類にも利用されます。

 

提出先や目的が異なる

一見すると表紙が変わっただけのように見えますが、その目的、一部の記載内容そして提出先が異なります。Ⅰの部の目的は東証が上場審査をするための審査資料です。従って、提出先は東京証券取引所になります。

 

いっぽう、有価証券届出書は有価証券つまり発行会社の株式を証券市場に上場することについて、お役所(金融庁管轄の財務局)に届け出る目的のものです。従って、株式の募集要項と売出要項が冒頭に記載されます。募集要項の中にはどんな株式を何株発行するのか、どの証券会社に引き受けてもらってどのように募集するのか、そして調達した資金はどのような使途なのかが詳細に記述されます。

 

また既存株主の株式売出に関しても細かい記載が求められます。このような証券情報が冒頭10数ページにわたって記載されることを除けば、あとの記載内容はⅠの部と同じものになります。

 

その後2回の訂正

有価証券届出書は、その後通常2回にわたり訂正届出書を提出することになります。訂正と言うと聞こえが悪いですが、通常は当初の有価証券届出書に記載した事項のうち未定だった事項、たとえばブックビルディングの結果決定した株式数や金額を更新するためのものになります。もちろん本当に記載間違いがあって、一緒に訂正するケースもあります。この辺りは、また別の機会で詳しく説明したいと思います。

 

届出書はEDINETで閲覧できる

ちなみに、有価証券届出書は金融庁(関東財務局など)への正式提出書類ですので、EDINET 等を通じて永久に公衆縦覧可能となります。会社によってはウェブサイト上にも掲載しているケースもありますが、少数派のようです。