その3 審査部による審査が始まる

公開審査部の審査

公開引受部のコンサルテーションが終了すると、公開審査部門に渡されます。本来的には全てのコンサルテーションが終了し、審査に耐えうる完全な姿になったことを確認できてから証券審査に渡されるべきなのでしょうが、実際には上場までのスケジュールがある程度決まっているがために、バタバタと審査になだれ込むということも珍しくありません。

証券会社の審査は取引所への上場申請に必要な推薦書を出すために行われる「推薦審査」というものと、上場にあたっての公募・売出しに関連した「ファイナンス審査」の二つがあります。

このうち中心的な審査となるのが推薦審査です。これは証券取引所が行う上場審査に準じた内容になっており、通常東証へ申請を行う半年程度前から行われます。証券会社によっては本審査と中間審査の2回に分けて行うような場合もありますし、改善が不十分であれば、改善期間を置いてから再度審査が行われます。

会社の規模や管理体制の状況により審査期間は長くも短くもなりますし、証券会社によってのカラーの違いもあるようです。

一方、ファイナンス審査は推薦審査が終わり、東証での審査の後半戦以降、上場日の前日まで行われます。いずれの審査も基本的には書面で行われます。

 

苦労して作ってきた申請書類のお披露目

公開引受部のコンサルテーションを受けながら作成してきたⅠの部やⅡの部(各種説明資料)、その他会社諸規程や各会議体の議事録、決裁書類などをもとに審査が行われます。

書類の提出直後は、審査部門による書類分析期間となりますので、会社側には束の間の休息時間が訪れます。

1~2週間後には、膨大な質問リストが審査部門から提示され、それに対して書面で回答を行うという流れになります。さらにその内容を確認するために数回の面談によるヒアリングも併せて行われます。

IPO -上場申請書類 その1 こんなにたくさん

 

審査項目

引受審査の項目は以下の通りです。

 1 公開適格性

 2 企業経営の健全性及び独立性

 3 事業継続体制

 4 コーポレートガバナンス及び内部管理体制の状況

 5 財政状態及び経営成績

 6 業績の見通し

 7 調達資金の使途

 8 企業内容等の適正な開示

これらの質問項目は全て証券取引所の審査においてもテーマとなるものですので、証券会社としては取引所の審査がスムーズに進むよう、証券会社の質問を予想しながら審査を進めていきます。

 

質問量は膨大

審査部門からの質問量は、会社の規模などによって違いはあるものの、小規模のマザーズ上場会社であっても数100問程度にはなるでしょう。基礎的な項目から詳細な質問まで様々です。各設問ごとに回答書を個々に作成するスタイルが一般的です。さらにそこに必要な添付資料や証憑類などを追加して提出しますから、回答書のファイルは最低でもキングファイル数冊に渡ります。最近は電子的に提出することも多いのですが、ファイルの管理もまた一苦労です。

 

内容は多岐にわたる

質問の内容は会社の事業全般にわたります。総務、人事、経理、経営企画、営業、製造、そして経営者など様々な人を巻き込んで回答書を作っていきます。期日に遅れることなく、回答書のレベル感を合わせる必要もあるので、その取りまとめや締め切り管理といったプロマネが極めて重要です。

質問書が出されてから回答書を作るまでは、余裕がある場合には数週間ありますが、審査の後半になると2~3日程度で回答書を作らなければならないケースも珍しくありません。