その4 必要に応じて参画する人たち①

ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタル(VC)は将来の成長が期待される企業に出資を行ってくれる会社です。上場の時にベンチャーキャピタルが株主名簿に名を連ねているケースは多いです。単に資金を出してくれるだけではなく、ハンズオン型といって役員の派遣や経営上のアドバイスをもらえるケースもあります。

上場するとベンチャーキャピタルは株式を売却します。それが彼らの収益なので、安定株主ではありえません。また必ずバイアウト又はIPOといったエグジットを用意しなければなりませんので、経営上のプレッシャーになってしまう場合もあります。したがって、そのような資金やアドバイスの需要がないのであれば、あえてベンチャーキャピタルから出資を受ける必要はありません。付き合いで出資を受けて後々面倒なことになってしまうケースも時々あります。

 

弁護士

上場審査にあたっては、法律違反というものははそれだけで一発アウトのリスクをはらんでいますので、過去から現在にかけての法的論点はすべてつぶしておく必要があります。会社法をはじめ様々な法律に抵触しているものはないか、取引先やとの契約書に瑕疵はないか、労働法規への違反はないか、もしグレーなものがあれば、法的にきちんとした解釈を用意しておくべきです。

証券会社や証券取引所からも、訴訟リスクを未然に防ぐため、顧問弁護士の見解を入手しておくように求められるケースもあります。過年度決算を遡及修正する場合の会社法上の見解などが代表例です。

もっとも、弁護士といっても万能選手ではありませんので、それぞれの分野に詳しい弁護士に依頼することが大切です。離婚調停専門の弁護士に会社法の解釈を依頼しては弁護士もかわいそうですし、上場審査上も逆効果です。

しかし、必ずしもフルレパートリーで顧問弁護士を用意せよというものではありません。社内に弁護士あるいは法律に詳しい人材がいるならばすべてを外部の弁護士に頼らなければならない訳ではありません。

弁護士の見解というのは非常に強力な武器ですが、伝家の宝刀というわけでもありません。専門家の意見を仰ぎながらも、社内でしっかりと咀嚼できる体制が上場会社には求められるのです。

 

税理士

ほとんどの会社には創業時から顧問の税理士がついているのではないでしょうか。しかし会社が成長するにつれ税務の論点も増え、処理も複雑になってきます。上場準備を機に、現在の税理士で十分か、よく検討しておいた方が良いかもしれません。上場前数年間のうちに重加算税を課されるような脱税があれば上場は白紙になってしまいますので、そのようなトラブルは絶対にあってはなりません。ほかにも企業会計基準とのすり合わせや、国際税務、グループ税制など、高度な税の知識も必要になってきますので、個人の税理士ではなく、組織的な税理士事務所や税理士法人に顧問を変更することも検討しましょう。

創業以来の顧問税理士も、会社経営者とは深い信頼関係にあることが多いので、顧問税理士を交代したとしても、サヨウナラではありません。顧問税理士は複数いても構いませんし、その他の経営上の顧問や、監査役など付き合い方を変えて支援してもらうのも良いでしょう。