その4 上場でどの程度資金調達できるのか

IPOによってどのくらい資金調達できるのか

IPOにおいては、株式を公募又は売出し(うりだし)により市場に放出することで、市場から資金を吸収します。発行済み株式数に対する、市場への放出(公募・売出)割合をオファリング・レシオといいます。

この割合はケースバイケースで、こうでなければならないという規制はありませんが、資本政策上の様々なポイントを追求する結果、概ね10〜30%に収まることが多いようです。

 

平均調達額は10億円くらい

最近の新規上場会社の資金吸収額(公募+売出+OA)は4,496億円でした(2019年~2022年までの平均。大和証券調べ)。このうち、会社の資金調達金額(公募)は1,059億円です(2019年~2022年までの平均。東京証券取引所調べ。)。単純計算で、公募1に対して売出しが3ですね。

 (注)OA…オーバーアロットメント

グロース及び旧マザーズにIPOする会社の場合ですと、公募価格ベースでの上場時時価総額の中央値は約120億円程度です(2020年149億円、2021年123億円、2022年95億円。あずさ監査法人調べ。)。資金調達(公募のみ)の中央値は5億円程度(2020年5億8千万円、2021年6億7千万円、2022年4億円。あずさ監査法人調べ。)でしたので、時価総額に対する資金調達の割合は4%ほどです。また、上記の資金吸収額から逆算すると、オファリング・レシオは15%~20%程度ということになります。

 

最低ラインで上場するとどうなる?

現在のグロース市場の上場基準においては、流通株式時価総額5億円以上とされています。旧東証マザーズの上場基準における時価総額の最低値10億円とおおむね近似すると思われますので、単純化のためにこの10億円という水準をイメージしながら考えてみましょう。10億円程度の時価総額による上場ではまったく割に合わないということをお話しします。

現在の上場会社の全産業平均のPER(株価と利益の倍率)は14倍程度と言われています。これをもとに計算すると、10億円の時価総額のためには当期純利益が7~8,000万円ほどあれば達成できるということになります。とても低いハードルに思えますよね。

いっぽう、最近のグロース新規上場の平均資金調達は、時価総額に対して4%ほどですので(上記参照)、これを時価総額10億円の場合にあてはめると、公募により会社に入ってくる調達資金は4,000万円にしかなりません。もちろんこれだけでも調達できることは嬉しいことですが、そのためにどれだけのコストをかけなければいけないのかを次に考えてみましょう。