その3 従業員持株会

従業員持株会は安定株主か

従業員持株会は、仕組みの設計いかんにより安定株主とも不安定株主ともなり得ます。従業員側の利便性も考慮してバランスよく設計したとして、平均的には上場後に半数くらいの従業員は持株会の株式を売却してしまうくらいに思っておいた方が良いでしょう。

 

長く持ってもらう工夫

長く持ってもらうための工夫の余地はいくつかあります。持株会の規約の中で退職した場合には会社が買い取るなどの条項を入れておくとか、持株会で株式を購入する際に報奨金を出す(資金援助する)仕組みにするなどです。

また、上場後半年間は売却できない等の任意ロックアップ条項を入れるケースもありますが、従業員の権利をむやみに制限しないよう注意が必要です。

安定株主対策としてだけでなく、従業員の退職防止にもなりますので、設計の際には専門家(証券会社又は資本政策に詳しいコンサルタント)とよく相談するとよいでしょう。

 

従業員の株式売買コントロールは難しい

持株会やストックオプション等を通じて従業員が株主となった場合、株式投資の経験がない従業員も多いので、ロックアップ解除後に慌てて全株式を売却しようとする人たちもいます。

社内関係者による自社株取引は、インサイダー規制に十分気を付けなければいけないのですが、取引可能期間になったら急いで処分したほうがよいと勘違いしてしまう人もいます。

 

売買高が少ないと株価にも影響が出る

通常、ロックアップの明ける上場6か月後あたりは、上場直後の過熱感が冷え、株価も低水準になっていることが多いのですが、新興市場のように株式の流動性が低い(売買高が少ない)状況下で、従業員がまとめて株式を売却しようとすると、売り圧力がかかって更に株価が下落するというスパイラルに陥りかねません。

もちろん、従業員の権利を過剰に制限してはいけませんが、ロックアップが明けるまでの期間内に、このような正しい知識をしっかりと教育しておくことは重要です。