監査等委員会設置会社のメリット
このように、監査等委員会設置会社には様々なメリットがあり、強力なマネジメント推進力のある新興企業にはふさわしい組織体系です。
また、執行と監督の分離という根本思想は組織の合理化にもつながります。従来型の監査役会設置会社では、執行機能と監督機能が混在していたがゆえに、付加的なモニタリング機能が要求されていたわけですが、監査等委員会設置会社はそもそもモニタリング型だという点です。
社外役員の重複感を回避できる
合理化のメリットの一つは社外役員の人数です。監査役会設置会社の場合、監査役は3人以上必要で、そのうちの過半数つまり2人以上は社外監査役である必要があります。また取締役についても、上場規程において取締役のうち独立役員を1名以上、現行のコーポレートガバナンスコードにおいて独立社外取締役を2名以上選任すべきであるとされています。そうすると最低限のボードメンバーを想定した場合であっても、最低4名の社外役員を選任しなければならないということになります。
これに対し監査等委員会設置会社の場合には監査役会はありませんので、取締役の2名以上が社外であることという要件を満たせば良いことになりますから、最低限のボードメンバー想定であれば社外取締役は2名で済むということになります。その2名の社外取締役を監査等委員と位置付ければこれで上場の要件をクリアすることができます。
審査官の前で声高にいう話ではありませんが、経営の合理性という意味では検討すべき見地です。
上場前に移行する例も増えている
実際、上場前に監査等委員会設置会社に移行した上で、上場申請を行う事例も増えてきています。モニタリング力の強い統治形態ですから、審査上もこれを否定する理由はありません。
ただ、審査にあたっては、完成形での一定の運用実績が求められます。したがって、申請の直前に移行してしまうと、運用期間の確認のための時間が足りず、結果的に審査が延びてしまう恐れがありますので注意が必要です。
会社法監査を受けなければならない
気を付けなければいけないのは、監査等委員会設置会社に移行するためには会計監査人を設置する必要があるという点です。上場前の段階であっても監査法人による会社法監査を受けなければならないわけです。
金融商品取引法に準ずる監査であれば、上場前の年度の監査報告書は上場申請時にまとめて発行することになるので、決算修正の時間的余裕がありますが、会社法監査になると毎年の株主総会に合わせてタイムリーに監査証明を出してもらうことになりますので、後になってから遡って決算修正を行うことができないという注意点があります。会社法監査に伴う監査報酬の増加分も考慮しなければならないでしょう。
監査法人側からすると、監査リスクの増加に見合うほどの報酬増加は見込めないことが多いので、上場前の監査等委員会設置会社への移行はあまり積極的に勧めない傾向があります。
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