その2 資産管理会社のメリット

税金が安くなる?

資産管理会社は、富裕層の人が、その所有する不動産や株式を管理することのみを目的として設立する法人のことをいうと説明しましたが(資産管理会社とは何か)、ここではIPO を目指す創業者の資本政策が本題ですので、不動産については割愛し、保有する自社株式を中心に話を進めましょう。

もっとも大きなメリットは税金面です。目いっぱい単純化してお話しすると、個人の所得税・住民税は累進課税ですので、約5%~55%の間の税率です。会社であれば法人税・住民税・事業税が23~30%程度かかります。つまり、高収入の方ほど個人の税金の方が高くなるということですね。

 

オーナーの配当金課税は高い!

新興市場上場直後の赤字ベンチャー企業でない限り、上場後には配当の支払いを始めるでしょう。1株当たり配当金は少額でも、創業者の持分は高いので、その配当収入も高額になることが多いと思われます。

配当収入には税金がかかります。株式投資のご経験のある方ならお気づきかもしれませんが、上場会社株式の配当であれば、20.315%の分離課税ですので、むしろ個人の方が税金が安いんじゃないかと思うかもしれません。しかし、それは間違いです。

 

3%以上所有すると大口株主

実は、所得税の計算上、株式の所有割合が3%以上の株主は、「大口(おおぐち)株主」というものに該当します。

そして、その場合の配当収入は非上場会社からの配当収入と同じ課税計算になるという決まりがあります。

非上場会社と同じとはどういうことかというと、非上場会社からの配当収入は20.315%の分離課税ではなく、他の所得と通算した総合課税になるということです。総合課税になると、その税率は累進課税になるので最大で45%、住民税も含めると約55%になってしまいます。

「3%」の判断基準は、従来は本人名義かどうかによる形式的判定でしたが、令和5年以降は、資産管理会社名義のものも合わせて判定することになったので、個人名義を2.9%にしてもダメです。

 

資産管理会社なら必要経費も控除できる

個人名義の株式の配当収入には課税所得計算上の必要経費という概念がありません。その他の所得における必要経費があれば通算可能な部分もあるものの、範囲は限られてしまいます。

これに対して法人税の課税所得の計算にあたっては、会社を運営するために必要な経費については、収入から控除することができます。

 

例えば、資産管理会社の役員報酬や従業員への給料、事務所の家賃やその他様々な経費など、その範囲は大幅に広がります。通常の生活費や個人的な支出を経費にすることは認められませんが、奥様や子供を資産管理会社の役員や従業員にして報酬・給料を支払うのはOKです。これなら家族外への資金流出を防ぎながら、節税と子孫への資産移転も図れます。

 

合法的な範囲で経費を上手く集めれば課税所得をゼロにすることもできますし、赤字になればその欠損部分は最長10年間繰り延べられます(個人の場合は最長3年間)。

 

社会保険にも入れる

国民は社会保険に入る義務があります。創業者がまだ現役でその会社の役員を務めているなら、奥様やその他扶養親族も、会社の厚生年金、健康保険に入っているはずなので、関係ありません。

 

問題は役員を退任した後です。会社の制度によっては退任後も一定期間は継続して任意加入できる場合もありますが、会社員でなくなれば、原則は国が運営する国民年金や国民健康保険に加入を切り替える必要があります。ところがこの国民年金や国民健康保険は、保険料が高く、しかも扶養家族も個々に加入しなければならないので負担が一気に上がります。

 

その点、零細であれ資産管理会社があれば、その役員や従業員は家族を含めて厚生年金や健康保険に入れるので、保険料負担が軽くなり、さらに将来の年金受領額も増えます。