その6 株価の算定方法

上場後は株価が付いているが・・・

ここまで、「仮に10億円の株式を」といって話を進めてきましたが、この金額はどうやって算定するのでしょうか。資産管理会社への移管を上場後に行うのであれば、すでに市場で株価が付いていますので、この金額が基礎になります。しかし上場前だと、定価がありませんので、別途算定する必要があります。

留意すべき点は、①税務上の適法要件と、②上場までのファイナンスストーリーです。

①税務上の適法要件は、相続税法に詳細な定めがあり、客観的かつ簡易に、そして納税者の負担が過度に大きくならないよう、低めの株価に算定されるよう設計されています。詳細な算定方法等は、他の専門書やウェブサイトをご覧ください。

いっぽう、②上場までのファイナンスストーリーにおいては、会社の成長や期待度の高まりとともに株価も上昇する仮定の下、事業計画や上場他社の株価をベースにした主観的な算定方法がよく用いられます。こちらは、ファイナンス(資金調達)規模を大きくできるよう、高めの株価に算定されるよう設計されます。

 

税務上の適法要件を満たせばよい

資産管理会社への株式譲渡においては、税務上の適法要件を満たせば問題はありません。上述のとおり、客観的かつ簡易に、そして低めの株価に算定されるよう設計されているわけですから、第三者割当増資の時のように、DCF法等で高い株価を算定する必要はありません。

 

ファイナンスストーリー

上場前の数年間には、第三者割当増資、株主間の相互売買、ストックオプションの発行など、様々な資本政策イベントが行われます。一般に、会社は成長していきますので、株価は右肩上がりとなるようにストーリー設計します。

中期事業計画の上方修正に伴い、株価が右肩上がりになるように設計し、当初からDCF法などの手法を一貫して用いて株価算定を行っていれば完璧ですが、計画の精度や算定コストの都合上、初期の頃は純資産法など税務上の算定方法に準じた簡易な株価算定方法を採用するケースが多いです。

 

過去の株価算定結果との整合性に注意

資産管理会社への移管は資本政策イベントの終盤に行うことが多いです。その場合、右肩上がりで描いていた株価ストーリーの中に、突然低額の株価が登場することになりますので、それに対する理論武装が必要になります。

上述のとおり、第三者割当増資の時と同じ算定方法による必要はないのですが、たとえば、過去に税務上の算定方法に準じて算定した株価の方が高かったりすると、どっちの算定が正しいの?ということになり、上場審査や会計監査において指摘の対象になりますし、税務上も信頼を失ってしまいます。