その2 インボイス制度と課税事業者の意味がよくわからん

課税事業者→インボイス制度適用の順番

ここまでの説明の中でも、「インボイス制度」と「課税事業者」という2つの言葉が登場しています。インボイス制度を適用するということと、消費税の課税事業者になるということは少し意味が違います。インボイス制度とは売り手側がインボイスすなわち「適格請求書」を発行する事業者になるということで、その前提として、売り手は課税事業者であることが求められます。この2つは同時に申請することができますが、考え方としてはまず課税事業者になり、次に適格請求書発行事業者になるという順番になります。

 

課税事業者になるのは強制と任意の2つがある

開業してしばらくの間は、おそらく免税事業者となっていると思います。課税売上が1千万円を超過すると、その翌々年から課税事業者となることが義務付けられます。しかし、それ以外の場合には任意ですので、率先して課税事業者になっているケースは少ないでしょう。

その理由は、①益税の恩恵があるので(納税しないので)経済的メリットがある、②(たとえ還付効果があったとしても)確定申告が面倒くさい、という2つです。

課税業者になるには、消費税課税事業者選択届を税務署に提出します。その方法については後述します。

 

消費税の還付とは?

前述のとおり、課税事業者になると消費税を納める義務が生じる一方で、消費税の還付を受ける権利も発生します。消費税というのは受け取った消費税から支払った消費税を差し引いた差額について、受け取った方が多ければ納税し、支払った方が多ければ還付してもらえるのです。

すなわち売上がそれほど大きくなく、一方で課税対象の支払いが大きい、つまり赤字になっている状況では課税事業者になった方がむしろ金銭的には得な場合もあります。

課税事業者となれば消費税の確定申告や消費税額についての帳簿作成が求められますので、その部分の手間は増えてしまいますので、シミュレーションを行ってみて、金銭的なお得感と手間を比較するのが良いでしょう。 

実はインボイス制度が始まる以前からこのようなシュミレーションを行って、あえて課税事業者を選択し、消費税の還付を受けている個人事業主はそれなりに一定数いると思います。今般インボイス制度が導入されることが良いきっかけになるかもしれませんね。

 

消費税額の計算は簡単

昨年の決算書、もしくは今年の予算書を手元に用意します。

国税庁のサイトにはこう書いてあります。

消費税の納付税額は、課税期間中の課税売上高に7.8パーセント(軽減税率の適用対象となる取引については6.24パーセント)を乗じた額から、課税仕入高に110分の7.8(軽減税率の適用対象となる取引については108分の6.24)を乗じた額を差し引いて計算します。

国税庁 納付税額の計算のしかた

 

パッと読んでもなんだかよく分からないかもしれませんが、預かった消費税と支払った消費税の差額全額を納付(還付)するのではなく、その78%分が納税(還付)対象だということでしょうか。

いえいえ、そうではありません。国税庁のサイトに書いてある78%というのは、国に納める消費税であって、残りの22%は地方消費税といって都道府県や市町村に納める消費税になります。