その1 上場直後の株価はこうやって動く

IPO 株式の値動きの特徴

株式投資において IPO 株式に投資したことがある人ならばよくご存知でしょうが、IPO銘柄は上場直後に値上がりしやすく、短期間で売却益を得やすい株式投資です。なぜ値上がりがしやすいかと言うと、それは想定される株価よりも若干低めの株価に値引き(これを IPO ディスカウントと言います。)して売り出されるからです。 証券会社の商売的にはお客さんにもう買ってもらいたい心理が働きますので、株価を低めに設定したがります。もちろん安すぎると手数料収入が減ってしまいますが、ちょっと安めくらいの株価で売り出すことができれば、お客さんにも喜んでもらえます。 いっぽうで、オーナー経営者の側からすると、株価によって会社への資金調達金額や創業者株主への資金流入額が変わってきますので、なるべく高い株価をつけたいという心理が働きます。そのため上場における値決めプロセスにおいてはオーナー創業者と証券会社との間で、時に激しいやりとりが生じることがあります。

 

値決めプロセス

非上場会社の株価算定は、純資産を基準に税法に定められた方法により算定したり、事業計画をもとに将来の企業価値を現在価値に割引いたりして算定しますが、 IPO に際しての値決めは入札方式又はブックビルディング方式により行われます。ブックビルディング方式は投資家の需給状況から価格を決めるもので、主に機関投資家からのアンケートをもとに決めるやり方が一般的です。

ベースのたたき台となる株価は、同業他社があればその PER を参考にして標準的な株価を割り出します。そこに一定の IPO ディスカウントを乗じたうえで投資家に提示し、その意見を聞きます。

 

ブックビルディング方式とは

ブックビルディング方式について、もう少し詳しく見ていきましょう。

 

(1)仮条件を決定する

新規上場申請者と主幹事証券会社は、新規上場申請者の財政状態、経営成績、事業内容などについて類似性の高い会社との比較や、機関投資家の意見などから総合的に判断し、公開価格に係る仮条件の決定を行います。

(2)公開価格を決定する

新規上場申請者と主幹事証券会社は、ブックビルディングによって把握した投資者の需要状況、上場日までの期間リスク、需要見通しなどから総合的に判断し、公開価格を決定します。

 

ブックビルディング方式のメリットは、入札のような価格の極端な高騰が起こりにくく、需要と供給のバランスがとれた価格の決定ができること。その結果、上場直後に売却するといった投機的な動きを比較的抑えることができることです。

  

 

(出所)https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/jan/220128_IPO/220128_summary.pdf